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2005年08月26日

まほうのふエッ!?【第一幕(その1)】(歌劇:魔笛)

■まほうのふエッ!?(歌劇:魔笛 全二幕)■

歌劇「魔笛」(台本:シカネーダー 作曲:モーツァルト)を、
管理人なりの解釈(物語内容理解が、第一の目的)で語っています。
2005年4月6日から8月26日まで、HPの日記の中(HPいちご・いちえの「だいあり〜」)に
連載したのを、まとめたものです。

・お話は、原作に沿っています。(パロディーではありません)
・原作に出てくる登場人物の名前は、そのままです。(「侍女1」などは、勝手に作っています)
・人物の性格や細かい描写は、多少歪曲、創作を含みます。
・へんてこな描写が出てきますが、あくまで「魔笛は好き!」という視点で書いています。
(時々ドラクエ風味)
・学術的に魔笛に取り組んでいる方には、失礼なことをしているかもしれませんが、
私なりにかみ砕いて、そして、ユーモアを持って親しんでみよう、というものです。
(勉強、ではなく娯楽視点)


【登場人物】
タミーノ・・・王子
パパゲーノ・・・鳥刺し
侍女3人・・・マリィ ミリィ ムリィ
夜の女王・・・パミーナの母
パミーナ・・・姫(夜の女王の娘)
ザラストロ・・・悪い人?実は・・・



参考資料
オペラ対訳シリーズ5 魔笛 海老沢敏訳(音楽之友社)
新装版世界歌劇全集 魔笛 伊藤武雄 改訂訳(同上)


【第一幕(その1)】

あるところに、タミーノという王子がいました。
タミーノは、狩りの途中。木々がうっそうと茂る山の中を、弓矢を手に獲物を追っていました。
しかし、どうしたことか、さっぱり獲物が捕れません。今日はもう、おしまいにして帰ろう。
そう思った矢先、目の前に大蛇が現れ、いきなり襲ってきました。

大蛇の攻撃。
タミーノは、4ポイントのダメージを受けた。
王子は矢をつがえようとしますが、さきほどまでの
狩りで、すべての矢は、使い尽くしていました。

ふたたび、大蛇の攻撃。
タミーノ2ポイントのダメージ。
タミーノは、逃げ出した。(ドコドコドコ)。
しかし、まわりを取り囲まれてしまった。
蛇は追いついた。ああっ、つかまるつかまる、つかまるーーー。神様、助けてーー!

迫り来る大蛇の姿。恐怖のあまり、タミーノは気絶してしまいました。
タミーノ、絶体絶命のピンチ。
どうなる、タミーノ!


そこへやってきたのは、近くの城の侍女、マリィ、ミリィ、ムリィの3人。
それぞれヴェールをかぶり、ヤリを手にしています。危険な気配を察して様子を見に
来たのでした。

マリィ「あら、大変!こんなに大きな怪物が!」
ミリィ「若者が襲われているわ!助けなければ」
ムリィ「私たちの手で、やっつけてやりましょう」

3人は、あっという間に、大蛇を退治してしまいました。
3人とはいえ、ヤリを持っているとはいえ、ひょっとして、タミーノより強いのか。
おそるべし、侍女3人。

3人は、気絶しているタミーノの顔を見つめながら、口々に言います。

マリィ「なんて、やさしそうな若者なんでしょう」
ミリィ「こんなイケメン、見たことないわっ」
ムリィ「絵に描きたいほど美しい、お・か・お」

マリィ「ねえ、この方なら、夜の女王様のお心を救ってくださるかもしれないわ!」
ミリィ「そうね、そうだわ。この人にお願いしましょう」
ムリィ「ならば、一刻も早く、女王様に知らせなければっ」

いったいどういうことなのでしょうか。女王とは、誰なのか。タミーノに何を頼むというのか。
それは、のちのちわかること。今は、この若者のことを、女王に報告しなければなりません。
ところが・・・・

マリィ「それならば、ミリィとムリィの二人で行ってきてちょうだい」
ミリィ「そんなのダメよ。あなた方が行ってきて。私はこの方を見守っているから」
ムリィ「いえいえ、私が見ているから、お二人で女王様へお伝えして」。

誰一人として、イケメン王子のそばを離れようとしません。
まだ気絶しているタミーノそっちのけで、言い争う3人。
いやはや、女というのは、●×△■◎※×○▲・・・

「自分がここに残る」と、言い張っていた3人でしたが、らちがあかないことにようやく気づき、
結局、タミーノを残して、みんなで、女王様へ報告に行くことにしました。



侍女たちが去っていくと、ようやく、タミーノが意識を取りもどしました。
「いったいここは、どこなんだろう?ぼくは、まだ生きているのか?神様が助けてくださったの
だろうか」。
足元には、タミーノを襲った大蛇が、息絶えて、横たわっています。

辺りを見回していると、遠くから、笛の音が聞こえ、それはだんだん近づいてきて、人の姿が
見えました。
タミーノは、そっと木の陰に隠れ、様子をうかがっていました。

見ると、大きな鳥かごを背負い、パンの笛を手にした、ヘンテコな(それは、全身羽根だらけ
の)姿をした男。
笛を吹き吹き、歌いながらやって来ます。

♪〜おいらは鳥刺し、パパゲーノ。
いつも陽気に、ほいさっさ。
笛はうまいし、鳥たちゃみんな、おいらのものさ。
国中のみんなが知っている、おいらは鳥刺し。
鳥を捕るのはお手の物。
でもでも、娘っ子はなかなか捕まらない。
もしも、1ダースの娘っ子をつかまえたなら、
おいらが一番好きな子に、お砂糖やって、やさしくキスをしてもらおう〜♪

な、な、なんなんだ、アイツ。タミーノは、頭がくらくらしてきました。


「おい、キミはいったい、誰なんだい?」
タミーノは、勇気をふりしぼって、ヘンテコな羽根おとこに声をかけました。
「誰って、見ればわかるだろ、お前と同じ人間だよ」と羽根おとこは言いました。
どう見ても、ぼくと同じ人間には、見えないんだけどな、という根本的な疑問はさておき、
タミーノは続けました。

「ここは、どのあたりなんだ?それに、キミのその背中の鳥かごは・・・・?」
羽根おとこの説明によると、このあたりは、夜の女王様が治めていて、彼は、その女王様に、
美しい鳥たちを届け、代わりに、葡萄酒や、砂糖付きのパンや、いちじくをもらっている、
と言います。
もっとも、羽根おとこ自身、女王様に会ったことはなく、侍女たちを通して、だとか。


星に輝く女王様?夜を支配するえらーい女王様だって?
これはもしや、父上がよく話してくださった「夜の女王」のことなのか。
でも、狩りをしていたぼくが、どうしてお話の世界のようなところに迷い込んでしまったの
だろう。
わからない、わからない!ひょっとして、この羽根おとこも、人間ではなくて、妖精かなんか?
さきほどの、根本的な疑問がむくむくと頭をもたげ、タミーノは、抱えきれないほどの
疑問符をこめて、羽根おとこをじーーっと見つめ、じりじりと彼に近づいていきました。

羽根おとこ(彼は、パパゲーノと言います)は、元来、陽気なのんき者でしたが、
疑い200パーセントの王子の眼差しと、彼との距離が縮まっていることに、耐えきれなく
なりそうでした。
パパゲーノは、思いました。
おいら、なんだか、おっかなくなってきたぞ。さっさと、逃げちゃおっかな・・・。

「えっと、えっと、おいらに近づくなよ。もしや、お前は、おいらのことを鳥だなんて、思って
ないよな?」
と、パパゲーノは、逃げる前に、先制攻撃に出ました。
「気やすく近づいてくるなよ。お、おいらは、す、す、すごいちからを持ってるんだぞ!!」
これで、相手がおじけづかなかったら、今度こそ、逃げ出そう、と覚悟を決めていると、
タミーノが言いました。
「そうか。そのすごいちからで、この大蛇をやっつけて、ぼくを救ってくれたんだね!」

なに?大蛇?どこどこ?パパゲーノが辺りを見回すと、大蛇がぐったりして、横たわって
います。
これ、ひょっとして、もう、死んでる?ほっとしたパパゲーノは、答えました。
「そうともさ。おいらが、この手でやっつけたのさ」。
タミーノは驚いて言いました。「すごいね、キミ。武器も持っていないのに!」


その時、後ろから、3人の女の声がしました。「パパゲーノ!!!」

「あの人たちは誰?」タミーノは、パパゲーノに尋ねました。
「さっき話した、鳥と交換に、色々なものをくれる人たちだよ」。
それは、気絶しているタミーノを見つけた、侍女3人でした。

マリィ「パパゲーノ!誰が、大蛇を退治したですって?」
ミリィ「あなたが、今後、うそをつけないようにと、女王様が罰をお与えになるそうよ」
ムリィ「はい、今日は、いちじくの代わりに、この金の錠前をあなたの口にはめてあげるわ!」

自分が大蛇を退治したなどと、口からでまかせを言ったパパゲーノは、うそをついた罰として、
ぱちん、と口に、錠前をかけられ、おしゃべりができなくなってしまいました。

ムリィ「若者さん、あなたを助けたのは、私たちだったのです。そして、女王様から、
あなたへ渡すようにとこれをお預かりしてまいりました」。
そう言って、一枚の肖像画を、タミーノに差し出しました。
なんと、美しい人なんだろう!!今までに、見たことがないほど、神々しいほどに・・・・。
タミーノは、胸が、ドッキンドッキンしました。ひょっとして、これが恋?これが愛?

肖像画には、お姫様が描かれています。あろうことか、タミーノは、一目ぼれしてしまいました。
どうやら、ほれやすいタイプのようです。

その様子を見て、侍女たちは言いました。
「そのお方は、夜の女王の娘、パミーナ様。強く、邪悪な悪魔が、女王様から、姫様を奪って
いったのでございます」

そんな悪いヤツが、この美しい姫を連れ去ってしまったなんて。許せない。
よし、ぼくが、その悪いヤツから、姫を奪い返してみせるぞ!。
タミーノは、心に誓いました。


すると、突然、あたりに雷鳴がとどろいたかと思うと、星の飾りが付いた玉座に座っている
夜の女王があらわれました。いきなり、なんだ?こんなところに?

夜の女王は語りはじめました。

♪〜愛する娘を奪われたのに 私はなにもできなかった。
不安にふるえ、心おののく姿が、目に浮かぶ。
「助けて!」とあの子は叫んだのに、私はあまりにも無力だった。
どうか、どうか、あの子を助けて。
お前が、あの子を救ってやってほしい。
そうすれば、あの子は、永遠にお前のもの〜♪

そう告げると、夜の女王は、あっという間に消え去ってしまいました。


今、聞いたことは、現実のものなのだろうか。それとも、意識を失っている間の幻だろうか。
パミーナ姫を救ったら、ぼくのもの、だって???
いや、それはともかく、姫を助けに行かなければ。神様、ぼくに力をお与えください!

もはや、はやる気持ちを抑えきれないタミーノは、姫を助けに出発しようとしました。
と、その時、パパゲーノがタミーノの前に、立ちはだかりました。
金の錠前が、しっかりと口に取り付けられているパパゲーノは、「ウ、ウ、ウ・・・」とモゴモゴ
言うだけです。
「ごめんよ、パパゲーノ。ぼくは、お前のために、何もしてやれないんだ」。
タミーノが謝ると、侍女が意外なことを口にしました。

「パパゲーノ、女王様が、あなたを許してくださるそうよ」
なんと、侍女は、パパゲーノの口に付いていた、金の錠前をはずしてくれました。
「やれやれ、やっとおしゃべりができるぞ。」パパゲーノは、ほっとして言いました。
ミリィ「ええ、そうよ。思う存分、話しなさい。ただし、もう決してうそをついてはいけないわ」
「はいはい、わかってます。おいら、もう、ぜったいうそはつかないよ」


いやあ、助かった。これでもう、こんなところからは、さっさとおさらばしよう。
パパゲーノが、そんなふうに考えているかたわらで、侍女たちは、タミーノに話し始めました。

マリィ「タミーノ王子。あなたが向かうべき敵、邪悪な悪魔の名は、『ザラストロ』。
彼は、太陽の神殿に住んでいます。どうか、そこから、姫を助けてきてください!
夜の女王様のために。どうぞ、どうぞお願いします。
これで、おわかりになりましたか?なんなら、もういっぺん、言いましょうか?」

  はい
→いいえ

ミリィ「そこへの道のりは、数々の困難が待ち受けているでしょう。
どうぞ、この金の笛をお持ちください。女王様からの贈り物。魔法の笛、です。
きっとあなたを助けてくれることでしょう」
ムリィ「この魔法の笛で、あなたは、なんでもできるのです」

タミーノは、金色の魔法の笛を手に入れた!

それじゃ、タミーノ王子、せいぜい頑張ってくれよ。おいらはこのへんで、失礼しようっと。
パパゲーノがそそくさと、立ち去ろうとすると、侍女たちが、声をかけました。
「あーら、お待ちなさい。パパゲーノ。あなたにも、お仕事があるのよ。
タミーノ王子のお伴をして、パミーナ姫様をお救いするのです。」

「ええーーーっ、そんなの、聞いてないよ。
きっと、おいらは、ザラストロに羽根をむしられて、フライになっちゃうよー。
いやだよ、いやだよ。」
パパゲーノは、なんとかして、その場を逃れようと必死です。
「そんな、こわがりやさんのあなたには、はいっ、これよ!」
マリィはそう言って、パパゲーノにも、宝物を渡しました。
「困ったときにこれを使えば、きっとあなたを守ってくれるでしょう。」

パパゲーノは、銀色の魔法の鈴を手に入れた!

つづけて、三人の侍女たちは、言いました。
♪〜銀の鈴と魔法の笛は、あなたがたを守るもの。さようなら、さあ行きましょう。
さようなら、またいつか会うときまで。
進むべき道は、三人のかしこい少年たちが、教えてくれるでしょう。彼らの言葉に従うのです。
さようなら、またいつか!〜♪

パミーナ姫を助けるために、タミーノが目指すは、ザラストロの城。
重要アイテム、魔法の笛を手に、いよいよ出発することになりました。
そして、何の因果か、魔法の鈴を手にしたパパゲーノも、一緒に。

パパゲーノが仲間になった!


第一幕(その2)>>

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まほうのふエッ!?【第一幕(その2)】(歌劇:魔笛)

【第一幕(その2)】

ところ変わって、ここはザラストロの城。
囚われの姫、パミーナの見張り役のモノスタトスに仕える奴隷たちが、こそこそと話して
います。
「わっはっは。これでモノスタトスもおしまいさ」
「あのカワイイ娘っこが、逃げちゃったんだもんな」
「おらたちを苦しめているモノスタトスが、お仕置きされるなんて、いい気味だ」。
どうやら、モノスタトスとかいう男の評判は、かんばしくない様子です。
パミーナはうまく逃げ通せたのでしょうか。それならひとまず安心、かと思いきや、
モノスタトスにつれられたパミーナが、部屋の中へ入ってきました。
やっぱり逃げられなかったのです。

「ここから逃げようなんて、考えちゃあいけねえよ、お姫様」
そんなモノスタトスに、パミーナは言います。
「死ぬことは、こわくなんかありません。ただ、お母様が気の毒で。きっと悲しみで死んで
しまうわ」
パミーナは、また捕まってしまったことがショックで、気を失い、ソファへ倒れ込んで
しまいました。
悪だくみの気配たっぷりのモノスタトスは言いました。
「やい、奴隷たち、用が済んだらさっさと行きな。ここはオレ様だけで十分だ。
さあて、いいことでもはじめるか・・・」。

そんなところへ、なんと、あろうことか、パパゲーノがまぎれ込んできました。
どうにかこの城へたどり着き、様子をうかがっているうちに、こんな所まで来ていたのです。
「ここはいったい、どこなんだ?まあいいか、思いきって入っちゃおう」。
窓からこっそり部屋へ入り込むと、若くてきれいな娘が見えました。
「あれ?」と思いつつ、部屋を探っているうちに、ばったりモノスタトスと鉢合わせ。
ふたりとも、突然現れた相手にびっくり仰天。「わわっ、こりゃ、きっと悪魔だぞ!
どうぞご勘弁を!!」
驚いたモノスタトスは、その場から逃げ出してしまいました。

パパゲーノは、気を取り直して、そこにいる、若くてきれいな娘に話しかけました。
「あなたは、もしや、夜の女王様の娘さんでは?おいらは、パパゲーノ。
女王様の使いの者ですよ。」
パミーナは、それを聞くと、とてもうれしそうに言いました。
「お母様の使いですって?それに、パパゲーノ?会ったことはないけれど、
名前はよく聞いていたわ。いったい、どういうことなのかしら?」。
パパゲーノは、タミーノが侍女たちからもらった肖像画を手にして、パミーナと見比べて
います。
「ええと、この肖像画は、黒い瞳。娘さんは・・・黒い瞳っと。真っ赤な唇は、・・・・うん、
確かにそうだな。金髪は、・・・・金髪だ!」。間違いないぞ。パミーナ姫、みっけ!

パパゲーノは、パミーナに、事の次第を説明しました。
夜の女王様が、タミーノという王子にこの肖像画を託し、パミーナを救って欲しいと頼んだこと。
そして、タミーノ王子は、パミーナのことを、とーーーっても好きになっちゃったこと。
姫様を助ける案内役を、賢い少年達がしてくれるって話だけど、まだ会えなくて、とりあえず、
パパゲーノが、偵察がてらここへ来たこと。
「さあ、おっかないザラストロに見つかる前に、一緒に逃げようよ!」
「そうね、ここから抜け出しましょう。早くしないと、そろそろザラストロが、狩りから戻る
時間だわ!」
パミーナとパパゲーノは、一緒に逃げ出そうとしました。
ところが、パミーナはすぐに足をとめ、引き返しました。

・・・・でも、これが、わなだったら?この男がザラストロの手下の悪者だったら??
パミーナは、疑心暗鬼。疑いの眼差し130パーセントで、パパゲーノを見つめました。
パパゲーノが、あわてて言いました。
「ちょっと待ってくださいよ、パミーナ姫。おいらのどこが、悪者ですか?どこからどうみても、
おいらは、世界一の善人にしか、見えないでしょう!えっへん」。
パミーナは、考え直しました。
お母様から託された肖像画を持っているのだから、間違いないはずだわ。
「ごめんなさいね、パパゲーノ。気を悪くしないでね。あなたは、優しい心の人ね。
お顔をよーく見れば、わかるわ」。

きれいなかわいいお姫様に、優しい心の人、なんて言われて、パパゲーノは、ふと、
気持ちがゆるんでしまい、ついつい、愚痴をこぼします。
「こんなにやさしいおいらなのに、どうして、このパパゲーノには、まだパパゲーナが
いないのさ?
彼女いない歴は年の数。それを思うと、おいら、悲しくって悔しくって、羽根をみんなむしり
取りたくなっちゃうよ、とほほ・・・」。

パミーナは、一瞬、あららと思いましたが、そこは純粋な、かわいらしいお姫様。
優しく声をかけます。
「そんなに嘆かないで、パパゲーノ。そのうちきっと、神様が、すてきな彼女をさずけて
くださるわ!ええ、きっときっと!」

♪〜愛はすばらしい。私たちは、愛に喜び、愛によって生きる。
男と女は最高に高貴なもの。
そして、そして、神にまで至るのです〜♪

勇気づけられ、パパゲーノは、元気を取りもどしました。
さあ、こうしてはいられない!逃げなくちゃ。


一方、われらがイケメン王子、タミーノはどうしているでしょうか。
彼は首尾良く、かしこい三人の少年たちと出会い、彼らに導かれて、その場所へ
来たのでした。

そこは「神聖なる森の中」でした。道の奥には、三つの神殿があり、
右から「理性の神殿」「叡知の神殿」「本性の神殿」と名前がつけられていました。

「ねえ、君たち。ぼくはパミーナ姫を救うことができるだろうか。教えてくれないか?」
不安なタミーノが少年たちに尋ねると、彼らはこう言いました。
「この道は、あなたの目的へと導いてくれるよ。色々なことに辛抱強く耐えること、
そして沈黙を守ることができたらね。それが男らしさというものだって。さあ、若者さん。
男らしく頑張ってね」
そう言い残して、少年たちは立ち去っていきました。

ええっ、もう行っちゃうの?なんだか心配だけど、しかたない。忍耐強く、そして沈黙を
守るのが男だなんて、誰が決めたんだ?男は黙ってサッ●ロビール、っていうの、
聞いたことがあるけど、関係あるのかな。(ないない)
でも、パミーナ姫を助けるにはそうしないといけないんだな。よし、頑張るぞ!

タミーノは、右の神殿の扉を開いてみました。
すると、「さがれ!」と声が。ここじゃないのか。
次に、左の神殿の扉を開きました。
しかし、今度も「さがれ!」と言われてしまいました。また違っちゃった。
残りはひとつ。おもいっきり、扉をたたいてみました。
すると、ひとりの僧侶が現れました。

「大胆な旅人よ、お前はここへ、何をしに来たのだ」。
タミーノは、答えます。「誠と愛の姿を求めに!」。
「そのわりには、お前の顔は憎しみに満ちておるな。」さすが僧侶。鋭い洞察力です。
「ぼくが憎むのは、ザラストロという悪魔です。ここにいるのですか?」
「さよう、ザラストロはここにいる。しかし、お前は、だまされているのではないか?
もう少し詳しく、話してみなさい」僧侶の言葉を聞いて、タミーノはわからなくなってきました。
だまされているって、どういうこと?

「ザラストロは、パミーナ姫をさらったわるいヤツ。姫を助けて欲しいと夜の女王に頼まれて、
ぼくはここへやって来たのです」と僧侶に告げました。
すると、僧侶は「お前は、そのような女の戯れ言を信じているのか?ザラストロは気高い心の
持ち主であるぞ。」と言いました。
そんなこと言われたって、パミーナ姫を連れて行っちゃったじゃないか。悪い人に決まってる。

「パミーナをどこに隠したのですか。ちゃんと生きているのでしょうね?説明してくださいよ!」
ところが、僧侶は、
「今ここでそれを語ることはできない。掟を破ることはできないのだ。やがて、友情が、
聖なる場所へお前を導き、永遠の縁に結ばれるときにわかるであろう」
そう言い残し、僧侶は去っていきました。
(ここの人たちって、自分の用が済むと、さっさといなくなっちゃうんだなぁ)
また、タミーノはひとりになってしまいました。

「ああ、いつになったら、パミーナに会えるんだろう。このまま会えずに、暗い闇の中を
さまようのかなあ」。
それに答えるかのように、どこからか、声が聞こえてきます。
「それは、やがて、やがて・・・若者さん・・・」
えっ?何だって?教えておくれ、パミーナは生きているのですか?
声は、答えました。「パミーナは、パミーナ姫は、生きている」

ああ!無事でいるのか。
神様、ありがとうございます。ぼくは、ぼくは、こんなうれしいことはありません。
タミーノは、魔法の笛をとりだし、うれしさいっぱいで、吹き始めました。

♪〜魔法の笛のやさしいひびき。たえなる調べに、森のけものたちもききほれる。
たえなる調べ、澄み渡る音色。森のけものたちさえ、ああ、このように。
それなのに、パミーナ姫には、いまだ届かず、まだ会えず。
パミーナ、パミーナ、どうかこの調べを聞いておくれ!

タミーノは、笛を吹いては、耳をすまし、耳をすましては、笛を吹きます。
しかし、返事はなく、むなしさがつのるばかり。ところが、何度目かに、聞こえてきたのです。
あの聞き覚えのある、パパゲーノのパンの笛が!
「ああ、あれは、パパゲーノの笛の音だ。やったー、すごいぞ。
きっと、パミーナを見つけたんだな。
これ、本当に魔法の笛なんだ。魔法の力が、導いてくれたんだ」


タミーノの笛の音を聞いた、パミーナとパパゲーノ。こちらも大喜びです。
「タミーノさまぁー!」パミーナは、思わず叫んでしまいます。
「しーっ、姫さま、だめだよ、静かにしなきゃ。返事は、おいらの笛でするからね」
パパゲーノはパンの笛で答えます。
「うんうん、こっちの方から聞こえてくるぞ。よし、こっちだ、さあ早く早く」

ところが、突然、目の前にモノスタトスと彼に仕える奴隷たちが現れました。
モノスタトスは、かんかんに怒っています。
「ようお二人さん、なにが『さあ早く早く』だ?このモノスタトス様をだますとは、
とんでもないヤカラだ。縄で縛って、よーくお行儀を教えてやる!」。

パミーナとパパゲーノは、がっくりと肩を落としてしまいました。
ああ、もう少しだったのに・・・・。

とその時、パパゲーノは思い出しました。そうだよ、これがあるじゃないか。
パパゲーノは、魔法の鈴を取り出して、鳴らしました。鈴の音が、あたりに響き渡ります。
すると、なんと、モノスタトスと奴隷たちは、踊りながら歌い始めました。

♪〜ああ、なんとすばらしい響き。きれいな音だろう。
ラララララ〜 ラララララ〜!
こんなのは、今までに、聞いたことない、見たことないよ。
ラララララ〜 ラララララ〜!

すっかり陽気になってしまったモノスタトスと奴隷たちは、歌い踊りながら、どこかへ
行ってしまいました。

やれやれ、また助かった。すごいなあ、この鈴。魔法は、ホンモノだったんだ。
そう思った瞬間、「ザラストロ、ばんざい!ザラストロ、ばんざい!」と叫ぶ声が
聞こえてきました。
とうとう、ザラストロが狩りから帰ってきてしまいました。
どうしよう。おいらがねずみだったら、すっ飛んで逃げるよ。かたつむりなら、家の中に
すっぽり隠れるのに。
ああ、なんて言えばいいんだ?
おたおたしているパパゲーノの横で、パミーナは、キッパリと言いました。
「本当のことを言えばいいのです!」。


長い行列、そして一番後ろに六頭のライオンが引く、ザラストロが乗る車が続きます。
出迎える人々は、口々に、叫びます。

♪〜ザラストロ、ばんざい!私たちが喜んでお仕えするのはこの方です。
賢者として、すばらしい生き方をされるこの方に。
私たちは、身も心も、すべて捧げます

ザラストロが車から降り立つと、パミーナは、彼の前にひざまずきました。

「ああ、ザラストロ様。どうかお許しくださいませ。私はあなたの元から逃れようとしました。
しかし、そのわけは、あの見張り役のモノスタトスが、いやらしいことを・・・、私をいじめようと
したのです。
それで、それで・・・・。」
パミーナは、必死に説明しようとしました。
すると、それをさえぎるように、ザラストロが語り始めました。

「そこの娘、立ちなさい。詳しく語らずとも、私はそなたのすべてがわかっておる。
ある者を恋い慕っていることも。そなたに、愛を強いるつもりなどない。
しかし、今、そなたを自由にすることはできないのだ」
パミーナは、さらに訴えます。
「でも、お母様が。私がいなくなって、お母様は悲しんでいるでしょう。どうか、ひと目、
母に会わせてください」。
パミーナの必死の言葉に、ザラストロは、こう告げました。
「案ずることはない。そなたの母は、私の支配下にある者。迷わずに、私にゆだねるがいい」

そこへ、モノスタトスがタミーノをつれて、やってきました。
やっぱり彼も、捕まってしまったのです。
「ほれ、さっさとこっちへ来い。生意気なヤツめ。そこにいらっしゃるのが、我らのご主人様、
ザラストロ様だ。」

「まあ、あの方が、タミーノ様?」。パミーナは声を上げました。
「パミーナ姫、やっと会えた。夢ではないのだ!」。タミーノも叫びました。
初対面にもかかわらず、ふたりは気持ちを抑えられず、互いにかけより、
ひしと抱き合いました。
なんと大胆な若者たちであることよ。やるときゃ、やるもんです。(違う違う)
ところが、「こらこらぁー、なにしてるんだ、まったく、今の若いモンは」。
ふたりは、あっという間に、モノスタトスに、引き離されてしまいました。

モノスタトスは、うやうやしく、ひざまずきます。
「ザラストロ様、このタミーノというヤカラは、そこのヘンテコな鳥の悪だくみにより、
あなた様からパミーナをさらっていこうとしていたのでございます。そこで、このワタクシめが、
つかまえましてございます。」
ザラストロは、むろん、すべてお見通しです。
「あいわかった。お前の行動は、月桂樹に値するものである。したがって、ほうびをとらせよう」。
ザラストロは、従者に命令しました。
「この男の足の裏を、77回だけ、打ってやれ!」

ほ、ほうびなど、め、め、めっそうもございません。お気持ちだけで十分でございますぅ〜・・・・
モノスタトスは、あっという間に、その場から、連れ去られてしまいました。
居合わせた者たちは、そろって声を上げます。
「ザラストロ、ばんざい!神のごとく、公平に罰し、公平に賞賛を与える賢者よ」。

ザラストロは、厳かに言い渡しました。
「このふたりのよそ者を、試練の殿堂へ導くのだ。彼らの頭を布でおおい、まずは、清めを
行うように」。

タミーノとパパゲーノは、抵抗するまもなく、頭から布をかぶせられ、従者に手を引かれて
いきました。
その場に残されたのは、パミーナ姫です。
「ああ、タミーノ様、やっとお会いできたというのに・・・。それに、お母様のことも心配だわ」。
悲嘆にくれるパミーナ。

ああ、これからどうなるのでしょう。そして、何が起こるのでしょうか。

カテゴリ:魔笛

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まほうのふエッ!?【第二幕(その1)】(歌劇:魔笛)

【第二幕(その1)】

ここは、神殿の中。
ザラストロは、おおぜいの僧侶たちを前に、タミーノの今後のことを、皆に、はかろうと
しています。

「ここに集まってもらったのは、他でもない。
タミーノという20歳になる王子が、徳高き心を持ってパミーナを助けようとやって来ている。
彼の徳高き心は、夜のヴェールを自ら引き裂き、まばゆく光り輝く聖なる者に目を
向けようとしている。この者を、見守り、友情の手をさしのべたいと思うが、いかがで
あろうか」

そこに集まっている僧たちが、次々と質問します。
「彼は、正しい行いができる者でしょうか」
「沈黙を守れるのでしょうか」
「慈悲深い心は、持ち合わせているのですか」

ザラストロは答えます。
「それらすべて、彼は持ち合わせていることは、私が保証する。
たしかに、彼は、我々を非難した。もともとは、夜の女王に言い含められ、悪しき先入観を
持ってここへやって来たのは、事実だ。
しかし、彼自身が、叡智や理性を身につけたなら、先入観など消えてしまうに違いない。
やさしく、貞節なパミーナのために、神々は、タミーノを与えられたのだ。

私が、夜の女王、すなわち、パミーナの母親からパミーナを引き離したのは、そのためである。
あの女は、自分の凝り固まった考えのもとに、人々を惑わし、この聖なる神殿を滅ぼそうと
しておる。断じてそのようなことはさせられぬ。タミーノは、我らと固く結ばれ、
神に仕える者として、徳には報い、悪徳を罰することを知るべきなのだ」


そこで、弁者が述べました。
「偉大なるザラストロ様、あなたのお言葉は、大変よくわかりました。
しかし、その若者は、厳しい試練にたえられるでしょうか。私は心配なのです。
彼は、王子だそうですが、今まで、のほほんと暮らしてきたとしたら、苦しみに耐えきれず、
過酷な試練にうちまかされてしまう、などということに・・・」

それに対し、ザラストロは、
「いや、まず、彼は王子である前に、人間である。そして、イシス、オシリスの神々がついて
おられる。その心配は無用じゃ」
そこまで、ザラストロが推すタミーノなる者、手をさしのべるに値するであろう。
結論が出たところで、ザラストロは宣言します。

「タミーノと、その連れの者を、神殿前の庭へ導き入れよ。そして、弁者よ。
ふたりの者に、人間である我らの聖なる義務とは何であるか、神々の大いなる力とは
何であるかを、教え説くことを命ずる」

弁者は、ひとりの僧を従えて、準備をすべく、その場から立ち去っていきました。



タミーノとパパゲーノが、弁者と僧侶に連れられて、前庭へやって来ました。
あたりは、真っ暗やみ。遠くで、雷の音が聞こえます。
頭にかぶせられていた布は、取ってもらえたものの、ふたりの重要アイテム、魔法の笛と
魔法の鈴は、取り上げられてしまっています。
不安げなふたりをそこへ残し、弁者と僧侶は、立ち去っていきました。


「パパゲーノ?そこにいるのかい?こんなに真っ暗なことってあるのだろうか」
タミーノの声に、パパゲーノが答えます。
「おいらなら、ここにいるよ。しかし、この真っ暗なのは・・・ぎゃぁー!!」
突然の雷鳴に、パパゲーノは、叫び声を上げました。
「大丈夫かい?パパゲーノ。雷が恐いのか?」
「こわいわけじゃ、ないんだけど、背中がゾクゾクするんだよ。うわぁー!!」

また、雷鳴です。確かに雷は強く鳴っていますが、パパゲーノの怖がりようは、尋常では
ありません。
タミーノは、半ばあきれて言いました。
「おい、パパゲーノ。君、男だろう?」
「お、おいら、娘っ子の方が、よかったよぅ。うぎゃぁー、おおおおお!もう、だめだぁ」
雷鳴と、パパゲーノの悲鳴が、闇の中に、響き渡ります。


そこへ、さきほどの弁者と僧侶が、たいまつを持って戻って来ると、あたりが明るくなりました。

弁者は、タミーノに尋ねました。
「お前たちは、われらに、何を求めているのだ?そして、ここで何を得ようとしているのだ?」
「愛と友情とを」
「それにより、命を落とすようなことになっても、お前は良いのか?今なら、引き下がることも
できるのだぞ」
「はい、命など、惜しくはありません。叡智の教えが、私を勝たせてくれるでしょう。
パミーナという優しい姫を得るためには!」
「それでは、すべての試練を、お前は受けようというのだな」
「はい、すべてを」
タミーノは、試練を受けることになりました。

一方、僧侶は、パパゲーノに尋ねました。
「パパゲーノ。お前も、叡智を得るために、戦うのか?」
「えー、おいら、そんなのめんどくさいよ。ただ、おいしいものをおなかいっぱい食べて、
ゆっくり寝られれば、それでいいんだ。えいちなんかいらないよ。どっちかっていうと、
えっちの方がいいな、カワイイ奥さんかなんか、いてさぁ」
「これこれ、何を言うか。我らの試練に耐えられなければ、それも叶わぬぞ」
「試練って、いったい何をするんですか?」
「われらの掟に従い、死をも恐れず・・・・」
「ほんじゃ、おいら、独身でいいや」

「ザラストロ様が、お前のために、若くてかわいい娘を預かってくださっているとしても、か?」
「若くて、カ・ワ・イ・イ!?」
「その子の名前は、パパゲーナ!」
「パ・パ・ゲ・ー・ナ ちゃんっ!?」

パパゲーノのテンションが、20上がった。

「うはー、わくわくするなぁ。おいら、その子に会ってみたいよ」
「会うことはできるが、時が来るまで、その娘とは、ひとことも口をきいてはいかんのだ。
どうだ、ガマンができるか?」
「そりゃあもう、おいら、頑張っちゃうもんね」
というわけで、パパゲーノも、試練を受けることになりました。


神々からふたりに与えられる沈黙の試練。
沈黙を守れば、幸せが待っている。
だが、女の人とひとことでも話せば、それでおしまい。
タミーノも、パミーナ姫に会うことになるが、絶対にものを言ってはならぬ。
これが、試練の始まりなのでした。




弁者と僧侶がいなくなると、そこはまた、闇の中。
タミーノとパパゲーノは、沈黙の試練の最中です。

「おーい、明かりを持ってきてくれよー。真っ暗闇は、いやだよぅ」
ぶつぶつ言うパパゲーノを、タミーノはたしなめます。
「がまんするんだ、パパゲーノ。それが、神様のおぼしめしなのだから」


しばらくすると、突然、女たちの声が聞こえてきました。
なんと、夜の女王に仕える侍女たちがやってきたではありませんか。
しかも、夜の女王本人も一緒にこの神殿へ忍び込んできたというのです。

マリィ「どうしたの?あなたがたが、こんな所にいるなんて」
ミリィ「けっして、けっして、もうここから出られないわ。タミーノ、あなたは死ななければ
ならないのよ」
ムリィ「パパゲーノ、お前は、もうダメだわ」

もうダメ、と言われて、パパゲーノはパニくってしまいました。
「いやだ、いやだ、あんまりだよぅ。おいらたち、もうだめだってぇぇぇぇぇ!」
「だまるんだ、パパゲーノ。女の人としゃべってはいけないという約束だろ」
パパゲーノのおしゃべりを止めようとするタミーノをよそに、パパゲーノは、ついつい
侍女の言葉に反応してしまいます。

「タミーノ。あなたは、もうダメだわ。
ここの坊さんたちの間違った考えを、聞き過ぎてしまったのです。あの人たちのいうことなど
真に受けると地獄に落ちると、女王様もおっしゃっておいでです」
「そりゃあたいへんだ。女王様が?あわわ、タミーノ、ど、ど、どうしようーーー」
ますますパニくっているパパゲーノに対し、タミーノは毅然として言います。
「何度言ったらわかるんだ。女王様の言葉だろうがなんだろうが、ここでは、しゃべっては
いけないんだ。パパゲーノ、自分の義務を考えて、かしこくふるまうんだっ」
タミーノとパパゲーノは、しっかり口をつぐみました。

しかし、侍女たちもあきらめません。

ミリィ「タミーノ?どうしてあなたは、話をしないの?」
ムリィ「パパゲーノも、しゃべってくれないのね。ほら、話なさいよ!」

またしても、パパゲーノは、誘惑に負けてつい、言葉を口にします。
「おいらだって、しゃべりたいんだけど・・・」
すかさず、タミーノが、「しっ!」
「しゃべったら・・・だめなんだよぅ・・・」
「おしゃべりがやめられないなんて、君の恥だぞ、パパゲーノ」
タミーノの必死の声に、パパゲーノも口をへの字に曲げて頑張ります。

その様子を見て、
マリィ「あきらめたわ。もう行きましょう。この人たちは、あてにならないわ」
ミリィ・ムリィ「そうね、この人たちは、おいて行きましょう」

三人の侍女たちが、立ち去ろうとしたその時、僧侶たちの叫ぶ声が聞こえてきました。
「聖域が汚された。そこなる女ども、地獄に落ちるがいい!」
稲妻とともに、ものすごい雷鳴がとどろき、二つの雷が落ちました。

侍女たちは、その場から地底へと消え去り、パパゲーノは、床にひれ伏しています。
「ああ、助けて、助けて、助けてーーーーーーー!」




ふたたび、弁者と僧侶がやってきました。僧侶の持つたいまつが、あたりを明るく照らします。
弁者は、タミーノに告げます。

「若者よ、よくやった。お前の男らしい毅然とした態度が勝利を得たのだ。
しかし、まだまだ厳しく危険な道を歩まねばならぬ。だが、お前は神々の助けにより、
終えることができるであろう。澄み切った心を持って、遍歴を続けるのだ。
さあ、一緒にまいろう。」
タミーノは、また、頭から布をかけられ、目隠しをしたまま、導かれていきました。

一方、こちらは、まだ床に倒れ込んでいるパパゲーノ。僧侶が声をかけます。

「これ、起きなさい。お前は何をしているのだ?」
「ううっ、おいら・・・・気を失って倒れているんだよぅ」
「まったく、しょうがないやつだな。おい、起きろ!しっかりするのだ。男らしくっ!」
パパゲーノは、ふらふらと立ち上がりながら言いました。
「でも、どうしておいらが、こんなひどい目にあわなければならないんだよ。
神様たちは、おいらに、パパゲーナちゃんを決めてくださっているんでしょう?
すんなりくれればいいのにさ。
その子を手に入れるのに、なんで、たくさん危ない目にあわなくちゃいけないんですか?」
僧侶は、けんもほろろです。
「そんなことは、自分で考えなさい。お前を連れて行くことだけが、私の役目なのだ。
はいはい、これをかぶって」
パパゲーノも、頭から布をかぶせられ、僧侶に連れて行かれました。

「あーあ、こんなにあちこちふらふらしてるんじゃあ、パパゲーナちゃんも、どっかへ
逃げちゃうよぅ・・・」




ところで、パミーナは、どうしているでしょう。
タミーノとやっと会えたのに、すぐに引き離されてしまい、またひとりぼっちになっていました。
庭園のあずまやで、悲嘆に暮れていたパミーナですが、いつしか疲れ果てて、眠ってしまって
いました。

そこへやって来たのが、あのモノスタトス。
「ちぇっ、なんでオレが、あんなおしおきを受けなきゃならないんだ。
まあ、まだ歩けるだけ良しとするか。あの娘を目の前にして、平然としていられるわけ
なかろうが。へへっ、誰も見てねえな。あの時は、へんてこな鳥のやつにじゃまされたが、
今度こそはうまくやってやろうじゃないか。キスぐらいしたって、バチはあたらねえだろうよ。
空のお月様よ、ちょっとの間、キスする間だけ、隠れてくれねえか?」
ぶつぶつつぶやきながら、モノスタトスは、忍び足で、パミーナに近づきます。

もう少しで、手が届くというところまで、近づいたとき。
雷とともに現れたのは、夜の女王。
「さがりなさい!」


その声に、パミーナは目を覚ましました。
「ああ、神様! ??? ああ、お母様、わたしのお母様!」
「私が、お前を助けるように頼んだ、あの若者はどこにいるのです?」
夜の女王の問いに、パミーナは答えました。
「タミーノ様は、神に仕える人たちに、身を捧げました」
その言葉に、夜の女王はうちふるえました。
「あの若者が、神に仕える者たちの仲間になったというのですか?
不幸な娘よ、お前は私から、永久に奪い去られてしまったのですね」

(タミーノ様があの方たちの仲間になることが、お母様と私を引き裂くことになるなんて?)
母を慕う気持ちと、タミーノを思う気持ちの間で、ゆれ動く中、意を決してパミーナは言います。
「お母様、私を守ってくださるのなら、すぐにここから逃げましょう。」


ところが、夜の女王の口から発せられたのは、次の言葉でした。
「私はもう、お前を守る力など、残っていないのですよ。
お前のお父様は、七重の太陽の環のもと、長い間この世界を支配してきました。
しかし、亡くなる少し前、大切な七重の太陽の環を、あろうことか、ザラストロに渡してしまった
のです。今、力を持っているのは、あの男、ザラストロ・・・。

お前のお父様は、最期の時、『今まで、私がしてきたように、これからは、ザラストロが
支配するであろう。もうこれ以上、言うことはない。なまじ、女の考えでよけいなことは
するでないぞ。
お前のつとめは、自分の娘と賢明な男の導きにゆだねることだ』と言いました。
でも、そんなことを私が承知するものですか!私こそが、次なるこの世界を・・・・」


(お母様とザラストロ様は、敵対していらっしゃる。タミーノ様は、今は、ザラストロ様のもとに。
私は、いったいどうしたら?)

パミーナは、不安な面持ちで聞きました。
「それでは、タミーノ様と私は、もうこれっきりになってしまうのでしょうか?」
「これっきり、これっきり、もう、これっきりぃーですかぁーって、なにを歌わせるんでしょう、
この子はっ。エエ・・・コホン・・・。夜が明ける前までに、お前があの若者を説得して、
逃げ出さなければ、彼は、僧侶たちのものになってしまうのです。
そう、お前のものにはならずに。」
「でも、愛するお母様。タミーノ様を、神に仕える人として、愛してはいけないのですか?
お父様ご自身も、神に仕える方たちと仲良くされて、いつもあの人たちのことをよろこんで
お話しされたり、ほめていらっしゃいました。それに、ザラストロ様は、本当に有徳の方ですわ。」

それを聞いた夜の女王は激怒しました。
「なんですって!私の娘であるお前が、あの野蛮な男の弁護をするというの?
それに、カタキのザラストロと手を組んで、私の破滅を狙っているような男を愛するというの
ですか?」

夜の女王は、短剣を取り出しました。
「ごらん、これは、ザラストロを倒すべく、磨かれたもの。お前は、あの男を殺すのです。
そして、太陽の環を、この手に取りもどすのです!!」

♪〜地獄の復讐が、心の中に
死と絶望が、私のまわりに
お前によって、ザラストロが死の苦しみを感じないのなら
お前は、もはや、私の娘ではない!
永遠に見捨てられ、打ちくだかれる。
聞くがよい、復讐の神々、聞くがよい、母の誓いを!


夜の女王は闇に消え去り、パミーナの手には、短剣が残されました。
「私には、できません。ザラストロ様に剣を向けるなど・・・。
でも、そうしなければ、お母様は私を勘当しておしまいになるわ!
神様、どうしたらよいでしょう!!」

「オレに任せねえか、お姫様?」
それまで、隠れて様子をうかがっていたモノスタトスが現れ、パミーナの手から、さっと短剣を
取り上げました。
「悪いが、話は全部聞かせてもらったぜ。お前の命も、お前のおっかさんの命も、今はオレの
手のうちにあるってことさ。オレが一言でも、ザラストロに言おうものなら、お前たちはここから
生きて出られることはない。お前とお前のおっかさんを救う方法はただひとつ。
オレを好きになりゃ、いいのさ」

パミーナは、恐怖にふるえました。(ああ、神様!なぜ、こんなことに・・・・)
しかし、決心して答えます。「それはできません。私の心は、タミーノ様に捧げたのですわ。」
それを聞いたモノスタトスは、激しく怒り、パミーナの手をつかみました。
「そんなことは、どうだっていいんだ。オレを愛すると言うか、死ぬか、どっちかしか、ねえんだよ」

乱暴に怒り狂っているモノスタトスに、パミーナはキッパリと言いました。
「どうしても、いやですっ!!」
「それなら、死ぬんだな!」モノスタトスが、怒鳴り声を上げた瞬間、目の前に、ザラストロが
現れました。

「ザラストロ様、この者たちは、あなた様を殺そうとしているのです。ですから、わたしが・・・・」
あわてふためいて、言い訳をするモノスタトスに、ザラストロは言いました。

「私は、よく知っているのだ。お前が、いかに腹黒いかということを。
本来なら、お前のたくらみを罰するところだが、今は、もっと重要な問題がある。
ここでお前が罰せられずに済むのは、あの女の悪い行いのためなのだぞ。
早々に、立ち去れ!」

その場を追い払われたモノスタトスは、つぶやきました。
「娘の方がダメなら、母親の方に当たってみるとするか・・・・」


パミーナは、ザラストロに懇願しました。
「どうか、お母様を罰しないでください!お母様は、私がいないことを悲しんで・・・」
ザラストロは、静かに語ります。
「私はすべてを知っておる。そなたのこと。そして母親の復讐心のこと。
そなたの母は、罰せられなければならず、そたなはそれを見届けなければならぬ。
だが、天はあの王子に、志を遂げる勇気と忍耐力を与えてくれよう。
そなたたちには、やがて幸福がやってくる。その時、そなたの母は恥じ入って、
自分の城へ戻ることとなろう。」


<<第一幕(その2)  ●第二幕(その1)  第二幕(その2)>>
posted by きるしゅ at 03:00| Comment(0) | 魔笛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

まほうのふエッ!?【第二幕(その2)】(歌劇:魔笛)

【第二幕(その2)】

さて、再び、タミーノとパパゲーノ。
弁者と僧侶に導かれ、大広間の前にやってきました。まだまだ、沈黙の修行中、です。
今度は、合図のラッパの音が聞こえたら、自分たちで、次へ進むようにと言われました。
パパゲーノは、僧侶から、
「ここでしゃべると、神々が、こわーい雷で、罰を与えるぞ!」と念を押される始末。
(大丈夫なのでしょうか?なんだか、心配だなぁ。)



またふたりだけになると、しっかりと沈黙を守るタミーノに対し、パパゲーノは、つい口を
開きます。
「タミ〜ノ〜!そうずっと黙っていることないよ。それに、おいらたちは男同士なんだしさ。
それにしても、ここの人たちは、水の一滴だってくれやしないんだな。
ましてや、他のものなんてとうてい、ムリなんだろうなぁ」


すると、そこに大きな盃をお盆にのせた、たいそう、よぼよぼの老婆がやってきました。
「はーい、私の天使ちゃん!」老婆は、そう言って、パパゲーノにお盆を差し出しました。
「ええっ、盃だよ!お、おさけ、持ってきてくれたの?おいらのために?」
パパゲーノは喜んで、ぐいと飲み干しましたが、それはただの水でした。
なーんだ。お酒なわけないか。でも、まあいいや。退屈だし、おばあちゃん相手にひまつぶし
しようっと。

「ねえねえ、おばあちゃん、おいらの隣にすわりなよ。年はいくつなの?」
「はーい、18歳と2分っ」
(じゅ、じゅうはちぃ?・・・と、にふん??? 81の間違いじゃないの?)

「へえー。そんでもって、彼氏とか、いるの?」(こうなったら、からかっちゃおう)
「はい、そりゃあもう。」(おおっ、おばあちゃん、けっこうやるじゃん)

「で、彼氏はいくつなの?彼氏も18?」
「いえいえ、10歳年上なのよー」

「そりゃ、なかなか、だね!で、彼氏の名前は?」
「パ・パ・ゲ・ー・ノ♪」

「『パパゲーノ』、っていうの?そうなんだー、って、ゲゲッ!まじですか?」
あわてふためくパパゲーノに、老婆は、隣にピッタリとくっついて言います。
「そうよ、私の天使ちゃんっ!!!」

うわーん、やめてよー。パパゲーノは、その場から飛びのき、おそるおそる老婆に尋ねました。
「・・・お、お、おばあちゃん、なまえ・・・なんていうの・・・・?」
「わたしの・・・なまえは・・・・」
老婆が、答えようとした瞬間、激しい雷鳴がとどろき、老婆はあっという間に消えて
しまいました。

だから、言わんこっちゃない、といった顔つきで、タミーノが、手で合図をします。
パパゲーノは、ショックで腰をぬかさんばかり。
「ううっ、おいら、もう一言も・・・・しゃべ・・・らない・・・」



そこへ、三人のかしこい少年たちがやってきました。
それぞれ、金色の魔法の笛、銀色の魔法の鈴。そして、おいしそうなパンなどが入ったカゴを
手にしています。
「お二人の、重要アイテムは、お返しします。はいどうぞ。それから、よかったら、
これを食べてね。」
「タミーノさん、もうひとがんばり、だよ!」
「パパゲーノさんは・・・・、ちゃんと黙っててね」(また、釘をさされちゃいました)


少年たちが去っていくと、タミーノは、さっそく笛を取り、吹き始めました。
パパゲーノは、というと、さっそくパンをかじっています。
それに、水ではなくて、ワインまであるのです。
食べ物で口がふさがっていれば、おしゃべりする心配もなさそうです。

と、タミーノの笛の音にひかれて、パミーナがやってきました。
「タミーノ様、ここにいらしたの?神様は、なんて親切なのでしょう。
私をここへ導いてくださるなんて!」

ところが、タミーノは、ため息をつき、悲しい眼差しで、パミーナを見つめます。
だって、まだ、沈黙の修業は続いているのです。話すことはできません。
黙っているタミーノに、パミーナはがっかりして言いました。
「タミーノ様、どうして、お声をかけてくださらないの?もう私を愛してくださらないの?」
タミーノは、かぶりを振って(違うんだ、違うんだ!)と訴えますが、パミーナには通じません。

「ねえ、パパゲーノ。私はあの方に、何か悪いことをしたのかしら?どういうことなのか、
教えてちょうだい」
そう言われても、同じ沈黙の修行中のパパゲーノ。説明するわけにはいきません。
向こうへ行くよう、目で合図をしますが、やはりパミーナには通じません。
それどころか、パミーナはますますがっかりしてしまいました。

♪〜ああ、愛は消え失せてしまった。
喜びの時は、もう、私の胸に戻っては来ない。
ごらんなさい、タミーノ様。この涙は、あなたのために、流れるのです
あなたが、愛を感じないのなら、
やすらぎは、死の中にしか、ないのだわ。



パミーナが、その場から走り去ると、合図のラッパの音が聞こえました。
タミーノは、先へ進もうと、パパゲーノを促しますが、彼は、まだ食べ続けています。
無理やり引っぱっていこうとしましたが、てんでダメです。

「先に行っててよ。やっと自由になって、食欲もりもりなんだからさ。今食べなくて、どうするよ。
ザラストロ様の、六頭のライオンを、おいらにつないで追い立てたって、行くもんか!」
パパゲーノがむだぐちをたたいていると、なんと、本当にライオンたちが、出てきて
しまいました。パパゲーノは、びっくり仰天。
「ええーーーーーっ、た、助けて、神様ぁー、タミーノさまぁー!」

(まったく、しょうがないやつだなあ)
タミーノは、まほうの笛を吹きました。
すると、六頭のライオンたちは、おとなしく、どこかへ行ってしまいました。

「ああ、びっくりした。おいらがごちそうを食べ終わる前に、ライオンたちが、
おいらを食べ終わっちゃうところだったよ。でも、もう、行かなきゃ、だめだよねぇ」
しきりに目配せをするタミーノに、しかたなく、従おうとする、パパゲーノです。

また、合図のラッパが鳴りました。
(ほら、行かなくちゃ、パパゲーノ。ぼくは、行くからね)
タミーノは、パパゲーノを力ずくでひっぱります。
「そんなに急がなくても、おいらたちがフライにされるまでには、まだまだ時間はあるよぅ」




タミーノは、次なる場所へ、やってきていました。
まわりには、僧侶たちがたくさん並んでいます。ザラストロが、彼に声をかけました。
「王子よ、そなたの態度は、これまで男らしく、落ち着いたものであった。
これから先、そなたは、あと二つの試練を受けなければならない。
いまだ、パミーナへの気持ちに変わりなく、また、将来、賢い王になりたいと思うなら、
神々は、さらに、そなたをお守りくださるだろう。パミーナを、これへ」

パミーナが、その場に呼ばれました。
(ここは、どこかしら?おそろしいほど、静かだわ。ああ、タミーノ様はどこ?)
不安げなパミーナに、ザラストロは言いました。
「ここで、ひとめ、彼に会うがよい。彼は、最後のお別れを告げようと、ここでそなたを
待っているのだ」

なんということでしょう。
やっと会えたかと思えば、すぐに引き離され、話すらできず、ふたたび会った今、
「最後」のお別れだなんて。
「タミーノ様、あなたには、死の危険が待っていますわ」
「いや、神々は、私を守ってくださるだろう」
「でも、でも、私があなたを愛しているほど、あなたが私を愛しているのなら、
こんなに落ち着いてなんて、いられないはずだわ」
「信じてくれ、パミーナ。ぼくは、君が思うのと同じくらい、愛しているのだ」

すると、ザラストロが語りました。
「パミーナよ。、タミーノを信じるがよい。そなたたちは、また会うことができる。
だが、時が来た。今は別れなければならぬ。タミーノよ。急いで行くのだ。
また会おうぞ。」



一方、パパゲーノは、まだ外にいました。
途中まで、タミーノと一緒に来たものの、取り残されてしまったのでした。

「タミーノ!どこへ行ったんだよぅ。置いてきぼりにしないでよ。これからは、ちゃんと
一緒に行くからさぁ」
返事はありません。しかたなく、目の前の扉を開こうとしました。
すると、「さがれ!」と叫ぶ声がして、雷が落ちました。
「うへぇー、神様!おいらは、どこへ行けばいいんですかぁー」
先へ進めないなら、戻ってみよう、と、もと来た方の扉に手をかけると、また「さがれ!」
の声と共に、雷が落ちました。
「ううっ、戻ることもできないなんて。うわーん、おいら、ここで、飢え死にしちゃうのか。
もう、おなかがすいてきたよぅ。ああ、なんで、タミーノの、旅のお伴なんか、
してきたんだろう」


泣きべそをかいているパパゲーノの前に、弁者が現れました。
「これこれ、パパゲーノ。本来なら、お前は、罰せられて永久に地球の暗い谷底を
さまようことになるはずだったが、神様は、慈悲深く、お前の罰を免じてくださるのだ。
しかし、お前は、神に仕える人々の喜びは、決して味わうことができないであろう」

弁者の声に、パパゲーノは、ほっとしました。(とりあえず、助かったみたいだ)
そうなると、すぐに自分のペースに戻ってしまう、パパゲーノ。

「うん、まあ、神に仕える人の喜びは、どうでもいいよ。
とりあえず、今のおいらは、一杯のワインがあれば最高だね。」
「それだけで、よいのか?それでは、望みを叶えてしんぜよう」
と、不思議、不思議!なみなみとつがれたワインが出てきました。
「うはーっ、これは、すごいや!天国みたいだ。満足、満足。ああ、良い気分だなぁ。
でも、できれば、そうだな、おいらが欲しいのは・・・・」

♪〜娘ッ子か、カワイイ奥さんがひとり
パパゲーノは、欲しいのさ。
おいしい食べ物、飲み物があれば、この世は天国。
うっとりするような娘ッ子が
おいらを気に入ってくれたらなぁ。
その子が、キスしてくれたなら
おいらは、元気になっちゃうよ!


パパゲーノがつぶやくと、さきほどの、老婆が現れました。
「はーい、私の天使ちゃん!もしも、私に忠実を誓うなら、お前さんのカワイイ奥さんが
ぎゅーっと、抱きしめてあげますよ♪」

ええっ、また、あのおばあちゃんっ??パパゲーノは、イヤな予感がしました。
「お、お、おばあちゃん?おいらを慰めてくれるっていうんだね。あ、あ、ありがとうね。
で、でも、おいら、遠慮しておくよ。」
「そうかい?でも、ここでことわっちゃうと、お前さんは、後悔することになるかもしれないよ。
ここから、永久に出られないかも・・・・・?」
「なんだって?」
「そうさ。水とパンだけが、お前さんの食事さ。男友達も、女友達もなく、世間にも永久に、
さよならしないといけないのだよ。さあ、どうする、どうする?」

パパゲーノは、究極の選択を迫られました。
どうしよう。ザラストロ様が、用意してくださっている若くてカワイイ奥さんは?
でも、おばあちゃんに忠実を誓わないと、一生パンと水しか食べられないって・・・。
一生、孤独で過ごさなければならないって・・・・。
そんなの、絶対イヤだ。そんな暮らしをするくらいなら、おばあちゃんと一緒になった方が
ずっとマシだ。

「うん、おいら、おばあちゃんに忠実を誓うよ!」
パパゲーノは、必死の思いで、老婆にそう伝えました。
すると、驚いたことに、老婆は、とーってもかわいい女の子に変身しました。
その子は、パパゲーノと同じように、羽根だらけの姿をしています。

「パ―― パ―― パパゲーナちゃんっ!!!」

パパゲーノのテンションが、50上がった!

パパゲーノは、彼女に抱きつこうとしました。が、その瞬間、
「さがれ、娘よ。彼はまだ、お前にふさわしいものではない。さあ、こっちへ来るのだ。」
弁者は、そう言って、女の子を連れて行ってしまいました。
パパゲーノは、あわてて追いかけましたが、扉をぴしゃりと、閉められてしまいました。

ああ・・・。そんなぁ・・・・。せっかく、パパゲーナちゃんに会えたのに。
パパゲーノは、がっくりと、肩を落としました。




さて、ここは、小さな庭園。
三人のかしこい少年たちが、歌を口ずさんでいます。

♪〜やがて朝を告げるため、輝くのは太陽!
迷信は消え失せ、やがて賢い男が勝利を得ます。
優しい憩いよ、今一度、人の心へ帰りなさい。
そのとき、この世は天国となる・・・

「ねえ、あそこにいるのは、パミーナ姫だよ」
「でも、絶望に苦しんでいるみたい」
「ぼくたちが、なぐさめてあげようよ」

少年たちが、そう言いながら、パミーナに近づいてみると、なんと、彼女の手には、
夜の女王から渡された剣が!目はうつろで、ただならぬ気配です。

「ああ、この剣こそ、私の花婿なのね?お前は、私の悲しみを終わりにしてくれるのね?
私のあの方は、もはや、愛するものを捨ててしまうことができる。
そして、お母様、私はあなたのために、苦しんでいるのです。
この手にあるいとしい者よ、私はお前のものですわ!」

これは大変!パミーナは、自分に刃を向けようとしています。
少年たちは、あわてて駆け寄りました。
「おやめなさい!あなたの若者がこれを見たなら、彼は悲しみのあまり、死んでしまうよ」
「タミーノは、あなただけを愛しているよ」
少年たちの声に、パミーナは、ようやく正気に戻りました。


「なんですって?それでは、どうしてあの方は、私に話しかけてくださらなかったのでしょう」
「それは、今は言えません。でも、一緒に来てください。
そうすれば、タミーノさんが、どれだけあなたに心を捧げ、そのためには死をも
恐れていないかを、知ることができるでしょう。さあ、一緒に、行きましょう」
パミーナは、三人のかしこい少年たちに連れられて、タミーノのもとへ向かいました。



パミーナと少年たちがたどりついたのは、大きな二つの岩山があるところでした。
ひとつは、炎が燃えさかる火の山。もうひとつは、ごうごうと滝が流れ落ちる険しい山です。
そして、タミーノは、その前にいました。

鎧を身につけたふたりの男たちが、タミーノに言います。
「タミーノよ。この二つの山、火の試練と水の試練に耐えたときこそ、神の智恵を受け、
勝利を得るであろう。」
「ぼくは、死を恐れない。ただ、徳の道を進むだけです!」

タミーノが、一歩を踏み出そうとしたその時、パミーナが叫びました。
「待って、タミーノ様!」
振り返ると、そこには、パミーナがいました。
「ぼくは、パミーナと話をしてもよいのですか?」
鎧の男たちにそう問いかけると、彼らは言いました。
「さよう、話すがよい。そして、手に手を取って、この試練におもむくがよい」

やっと会えた!タミーノとパミーナは、しっかりと抱き合いました。
どんな運命であろうとも、もはや、ふたりを引き離すことはできないであろう。
たとえ、死すべき運命であろうとも・・・・・。

力を合わせ、タミーノと、パミーナは、一緒に試練を受けることになりました。

パミーナが仲間になった!



パミーナは、タミーノに言いました。
「私は、たとえどんなところでも、タミーノ様のおそばにいますわ。
私の愛は、タミーノ様を導きます。苦しみの中にも、喜びはあるのです。
そして、タミーノ様は、魔法の笛を吹いてくださいね。
この笛は、私のお父様が、千年の樫の古木から作ったのです。
稲妻が走り、雷鳴がとどろく嵐の日に、深い理由をこめられてできた、魔法の笛なのです。
それは、険しい試練の中、私たちを導いてくれるでしょう。」



鎧の男たちに見送られて、ふたりは、火が燃えさかる山へ入っていきました。
熱い風が吹き寄せ、息ができないほどです。
タミーノは、心をこめて、笛を吹きました。
パミーナは、タミーノに、ぴったりと寄り添い、ついていきます。
不思議なことに、タミーノたちの足元だけは、通り道ができて、先へ進むことができました。
こうして、無事に火の試練を終えました。

「やったぞ!」
「タミーノ様!」
ふたりは、無事を確かめ合い、抱き合って喜びをかみしめました。

しかし、よろこびもつかの間、もうひとつの試練が待っています。


今度は水の試練です。滝は水しぶきを上げ、水煙で辺りはよく見えません。
耳をつんざくような滝の音は、互いの声も聞こえないほどです。
タミーノは、祈りをこめて、魔法の笛を吹きました。
パミーナは、タミーノに、しっかりと寄り添い、ついていきます。
不思議なことに、ここでも、タミーノたちのまわりだけは、通り道ができて、
進むことができました。

やっとのことで、滝の岩山から出てくると、目の前には、門が開かれていて、
立派な神殿へと続く道が見えていました。

「ああ、神様!これこそ、あなたさまのお恵みなのですね!」


と、中から、僧侶たちの喜びの声が聞こえてきました。
「ばんざい。気高いふたりよ。危険に打ち勝ち、イシスの神の力は、そなたたちの
ものになった。さあ、神殿へ、入ってくるがいい」

こうして、タミーノとパミーナは、試練を乗り越え、僧侶たちの祝福に迎えられたのでした。
めでたし、めでたし・・・・・って?
何か忘れてはいませんか?そう!パパゲーノは、いったいどうしているでしょうか。




彼は、弁者に閉め出されてしまい、まだ、前庭にいるのでした。
もう、どうしたらよいか、わからない!!
パパゲーノは、自分のパンの笛を吹きつつ、叫んでいます。

「おーーーい!パパゲーナちゃーーーーーーーーーんっ!
おいらのカワイ子ちゃんは、どこへ行ったんだよぅ。ああ、だめか。返事はない。

なんておいらは、不幸なんだろう。そもそも、あんなに、ぺちゃくちゃ、おしゃべりしたのが
いけなかったんだ。それに、調子よくワインなんかもらっちゃって、そんでもって、
パパゲーナちゃんに出会ったりしたもんだから、おいらのちっちゃなハートは、
こげこげになって、こっちも痛けりゃ、あっちも痛い。

もう、パパゲーナちゃんに会えないなら、生きていたってしょうがないよ。
死んじゃえば、こんなつらい思いだってしなくて済むんだ。
ああ、もう、生きてなんかいられない!!」


思い詰めたパパゲーノは、手に縄を握りしめました。
「これを使って、おいら、この樹で首をくくって、樹の飾りになってやる!」
大変なことになりました。誰か止めてくれる人は、いないのでしょうか?
このままだと、パパゲーノは、ひとり、前庭の樹の飾りになってしまいます。


「ほんとに、誰もあわれんでくれないの?」
パパゲーノは、また、叫んでみました。でも、あたりは、しーんとしています。
「それじゃ、そろそろ・・・・。ん?あと、みっつ数えるまで、待ってみようかな」

パパゲーノは、パンの笛を吹きつつ、数え始めました。
「♪〜ピロロロロ〜  いーーーーーーーーーーち!」
誰も来ません。
やけくそになって、
「♪〜ピロロロロ〜  にーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」
やっぱり誰も来ません。
もう、半べそになって、
「♪〜ピロロロロ〜  さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「うわーん、やっぱり誰も来ないよ。もういいよ。おいら、この世におさらばするよ。
さようなら。つまらない人生だったな・・・・・」

手にした縄を木の枝にかけ、輪の中に首を入れようとしたその時、

「待って、パパゲーノ!命は、ひとつしかないんだよ」
三人のかしこい少年たちです。

「そんなこと言ったって、あの子がいないんじゃ、生きてたってしょうがないよ」
すっかりしょげかえっているパパゲーノに、少年たちは言いました。
「それなら、鈴を鳴らしてごらん?」
「それが、君のかわいい娘さんを、届けてくれるよ!」

そうだ、そうだよ。魔法の鈴のことを、すっかり忘れていた。
魔法の鈴よ、鳴り響け!おいらのカワイ子ちゃんに、会いたいんだっ。

♪〜鈴よ、鈴よ、鳴り響け。
おいらのあの子を連れてこい!

パパゲーノは、一生懸命に鈴を鳴らしました。ずっとずっと鳴らしました。
あたりに、澄んだ鈴の音が、広がっていきます。

「さあ、パパゲーノ。ふりかえってごらん!」
三人の少年たちの声に、パパゲーノが後ろを向くと、そこには、あの、かわいい、パパゲーナが
立っていました。

や、や、やったーーーー!パパゲーナちゃんだっ!!

パパゲーノは、スーパーハイテンションになった!


パパゲーノとパパゲーナは、うれしそうに、歌い踊ります。

♪〜パ、パ、パ、パ、パパゲーナ!
パ、パ、パ、パ、パパゲーノ!
キミは、おいらのカワイイ子になってくれるの?
あなたは、わたしの小鳩ちゃんになってね。
ああ、なんてうれしいことだろう。
もしも神様が、わたしたちの、ちっちゃなかわいい子供を贈ってくださるなら、
最初は、ちっちゃいパパゲーノ。
おつぎは、ちっちゃいパパゲーナ。
そしたら次は、パパゲーノ。
次はまたまた、パパゲーナ。
そしたら、ほんとに、すばらしい!たくさんたくさん、たくさーん!幸せがいっぱい!!

パパゲーノは、やっとやっと、愛しのパパゲーナちゃんとめぐり会いました。
よかった、よかった。


そのころ、夜の女王と三人の侍女たちは、モノスタトスに連れられて、神殿の奥深くへ入ろうと
していました。
あたりは、真っ暗。静かに、そっと、忍び込め。そっと、そっと、忍び込め。

「おっと、その前に、女王様。あんたの娘を、オレの嫁さんにくれるっていう、約束。
忘れちゃいないだろうね」
モノスタトスが、夜の女王に念を押します。
「ええ、もちろんですとも。約束は守ります。」夜の女王は、返事をしました。


モノスタトスが、声を押し殺して言います。
「しっ。なにやら、おそろしいざわめきが聞こえてくるぞ。かみなり?いや、滝の音か?
さあ、ここです。ザラストロがいるのは!」

「いよいよ、復讐の時が来ました。不意を襲うのですよ。さあ、ザラストロ、覚悟しなさい!」

夜の女王一同が、乗り込んでいこうとした瞬間、ものすごい雷鳴と稲妻、そして、嵐が
起こりました。
そして、あっという間に、彼らは、地底へと飲み込まれてしまいました。



その時、まばゆいばかりの太陽の光が、いっぱいに差し込んできました。
闇のベールは去り、明るい世界になったのです。

ザラストロは、宣言しました。
「太陽の光は、闇を打ち払い、邪悪な力をほろぼした」

あたたかい光。明るい世界。愛と友情につつまれ、タミーノとパミーナは、幸せいっぱい。
そして、パパゲーノとパパゲーナもうれしそう。

僧侶たちの歌声は、高く高く、響き渡っていきました。
♪〜ばんざい!清められし者たちよ。
オシリスとイシスの神よ、感謝いたします。
強きもの、清きものは、とわに栄えあれ。
美しき、叡智の王冠は、とわに輝く。


<おわり>

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posted by きるしゅ at 04:00| Comment(0) | 魔笛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする